新2年スナイプスキッパーの豊澄成光です。
沖縄の座間味合宿中に、本を3冊読みました。その中でも、「心を動かすマーケティング:コカ・コーラはこうして作られる」という本が印象に残っています。この本は、日本コカ・コーラの元代表取締役会長の魚谷雅彦さんが書いた本です。内容をざっと説明すると、「どうやって商品を売るか」というテクニックの話というよりも、「どうすれば人の心を動かせるのか」という本質的な問いに向き合った一冊でした。マーケティングとは単なる広告や宣伝ではなく、人の感情や行動を理解し、それを動かす“仕組み”をつくることだという視点が一貫していました。
特に印象に残ったのは、「心を動かすことを偶然に任せない」という考え方です。コカ・コーラは、感動や共感といった一見ふわっとしたものを、徹底的に仕組み化・システム化しています。戦略を立て、それを現場で実行できる構造をつくり、組織全体で同じ方向を向く。個人の才能や気合いに依存しない「再現性のある仕組み」があるからこそ、世界規模でブランドを維持し続けられるのだと感じました。
また、日本コカ・コーラとボトリング会社の関係性についての話も印象的でした。戦略を描く側と、現場で実行する側。そのどちらが欠けても成り立たない。互いに役割は違っても、目指す方向が一致しているからこそ、組織として機能する。これは単なるビジネスの話ではなく、「組織とは何か」という問いにつながる内容でした。
正直に言うと、私は最初、「ブランドを握る日本コカ・コーラが絶対的な立場で、ボトラーは従う側なのではないか」と思っていました。いわば“王と家来”の構図です。戦略は上から考えられ下はそれをただ実行するだけだと思っていました。
しかし、本を読んでその考えは覆されました。
日本コカ・コーラは、ボトラー社が納得できるように発表会や説明の場を設け、戦略の背景や意図を共有し、対話を重ねているそうです。なぜこの施策なのか。なぜ今なのか。どんな未来を目指しているのか。
戦略を押し付けるのではなく、「自分ごと」にしてもらう。
つまり、組織を動かすとは「命令すること」ではなく、「理解を共有すること」なのだと気づきました。
これをヨット部につなげると、ヨット部は競技団体であると同時に、一つの組織です。選手が勝つための環境を整えること、新入生を惹きつけること、応援してくれる人を増やすこと。これらはすべて、ある意味でマーケティングであり、営業でもあります。ただ強くなるだけでは、人は集まらない。 ただ「入ってほしい」と言うだけでは、入ってくれない。
では、どうすれば人の心を動かせるのか。
その場の勢いや個人の熱量だけに頼るのではなく、「人が動きたくなる仕組み」をつくれているか。発信の仕方、役割分担、目標設定、共有の方法。それらをシステムとして設計できているかどうかが、組織の強さにつながるのではないかと思いました。でもこれを実際に実現するのは難しいことです。でも正直に言うと、この本を読んで一番思ったのは、「コカ・コーラみたいな巨大な会社で意思疎通が取れているなら、もっと小さいヨット部なら、もっとできるはずじゃないか?」
ということでした。
何万人規模の組織で、戦略を共有し、方向性をそろえ、現場まで落とし込んでいる。 それができているなら、数十人の組織でできないはずはない。
でも、現実には難しい。
なぜかと考えたとき、僕は「意思決定のプロセス」が見えづらいことが一つの原因なのではないかと思いました。
みんなの意見はどこまで聞かれているのか。 どういう議論を経て方針が決まっているのか。 何を基準に優先順位が決まっているのか。
そこが不透明だと、方針そのものが正しくても、「自分ごと」になりにくい。 結果として、納得感のないまま“従う側”になってしまう。
コカ・コーラがやっていたのは、単に戦略を示すことではなく、 「なぜそれなのか」を説明し、共有し、納得できる状態をつくることでした。
規模が大きいから難しいのではなく、 規模が大きいからこそ、そこに徹底的に向き合っている。
人数が少ないことは、弱みではなく、本来は強みのはずです。 顔が見える距離だからこそ、もっと対話できるはず。 もっと透明にできるはず。
この本を読んで、「人を動かす仕組み」だけでなく、「組織の透明性」の大切さについても考えさせられました。
強いチームとは、速い艇を走らせるチームであると同時に、人の心を動かせるチームなのかもしれません。
失礼します。